日本のエネルギー事情とは?エネルギー白書2023から読み解く

2022.09.21

電気代の高騰、再生可能エネルギーの普及、カーボンニュートラル社会の実現…日本のエネルギー事情は、ものすごいスピードで変わり続けています。

このエネルギー事情を年に一度まとめたものが、経済産業省から提出される「エネルギー白書」です。エネルギー白書には、国内外のエネルギー事情だけでなく、日本が行った施策や今後の方向性も記載されています。

そして2023年6月、「エネルギー白書2023」が公布されました。

この記事では、エネルギー白書2023から分かる日本の最新エネルギー事情を紹介します。

目次

エネルギー白書とは?

エネルギー白書はエネルギー政策基本法に基づいて公布される年次報告(法定白書)で、提出元は経済産業省の資源エネルギー庁です。

エネルギー白書は3部から構成されます。

  • エネルギーをめぐる状況と主な施策(エネルギーに関するその年の重要なポイント)
  • エネルギー動向(国内外のエネルギーデータ)
  • エネルギー需給に関して講じた施策(行った施策と今後の取り組み)

エネルギー白書は、日本のエネルギー事情を理解するうえで欠かせない資料と言えるでしょう。

日本のエネルギー事情

日本のエネルギー事情


まずは日本のエネルギー事情からみていきましょう。

ここでは以下のポイントを解説します。

  • 日本のエネルギー自給率の現状
  • 日本のエネルギー自給率の推移
  • 再生可能エネルギーの普及率

日本のエネルギー自給率は11.2%

エネルギー白書2023によると、2020年度のエネルギー自給率は11.2%でした。

エネルギー自給率とは、一次エネルギーを国内でどれだけ生産・確保できているかを示す指数です。一次エネルギーには石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料以外に、再生可能エネルギーも含まれます。

エネルギー自給率は、以下の計算式で算出されます。

  • エネルギー自給率(%) = 国内産出 / 一次エネルギー供給 × 100

日本は化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。特に原油は、中東地域への依存度が高いです。これは、中東で発生した問題の影響を受けることを意味しています。1970年代に起きたオイルショックは、産油国などの戦争による情勢不安が原因でした。

関連記事:日本のエネルギー自給率は約10%!低い理由と今できる取り組みとは?

エネルギー自給率の推移はわずかな右肩上がり

日本は高度経済成長期(1955年度〜1972年度あたり)、エネルギー需要は大幅に上昇しました。1960年度の主なエネルギー源は国内でとれる石炭や水力だったため、エネルギー自給率は58.1%でした。しかし主なエネルギーが石炭から石油になるにつれ、エネルギー自給率は下降していきました。

その後、原子力発電の導入などによりエネルギー自給率はわずかに上昇。しかし2011年の東日本大震災以降、原子力の発電量が減少し、2014年には原子力による発電が停止したため、自給率は6.3%と過去最低になりました。

2015年以降は原子力発電所の再稼働や再生可能エネルギーの普及により5年連続で上昇していました。2020年度は原子力発電所の定期検査が長引いたため、エネルギー自給率はわずかに低下しています。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」第1章 国内エネルギー動向

再生可能エネルギーの普及率は15.2%

日本を含む世界各国で再生可能エネルギーの普及が促進されています。

エネルギー白書2023によると、2020年度の再生可能エネルギーの国内供給割合は15.2%でした。カナダやスウェーデン、デンマークなどの北欧が65%以上の割合であることから、世界全体で見ると日本の再生可能エネルギー普及率は低いと言えます。

日本で最も導入が進んでいる再生可能エネルギーは太陽光発電です。日本における太陽光発電の導入量は世界的にも多く、2020年時点では世界第3位でした。

2019年度の再生可能エネルギー普及率が12.1%であることから、徐々に普及率は上がっていると言えますが、脱炭素社会を実現するためには克服すべき課題が多くあると言えるでしょう。

関連記事:日本の再生可能エネルギーの現状とは?課題や取り組みも紹介

日本が抱えるエネルギー問題

日本が抱えるエネルギー問題


政府は脱炭素社会の実現を目標としていますが、日本には克服すべきエネルギー問題がいくつかあります。

ここでは、日本が抱えているエネルギー問題を紹介します。

  • 化石燃料の海外依存
  • 送電設備をはじめとしたライフラインの老朽化

化石燃料の海外依存

日本は化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っています。原油、石炭、天然ガスのすべてにおいて海外依存度が高く、国際的な情勢不安の影響を受けやすい状態にあります。

2021年時点における日本の化石燃料の海外依存度は以下のとおりです。

  • 原油:99.7%
  • 石炭:99.7%
  • 天然ガス(LNG):97.8%

特に原油は輸入量の91.7%を中東に依存しています。また天然ガス(LNG)もオーストラリアやマレーシア、カタールなどへの依存度が高く、輸入国の多角化が必要とされている状況です。

参考:資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2022年度 『エネルギーの今を知る10の質問』」

また、2022年2月のロシアによるウクライナ問題により、世界情勢が不安定となりました。日本ではロシアから原油・石炭・天然ガス(LNG)を輸入しています。

  • 原油:ロシアが占める割合 3.6%(輸入国第5位)
  • 石炭:ロシアが占める割合 11.0%(輸入国第3位)
  • 天然ガス(LNG):ロシアが占める割合 8.8%(輸入国第5位)

※2021年速報値

参考:資源エネルギー庁「化石燃料を巡る国際情勢等を踏まえた新たな石油・天然ガス政策の方向性について」

送電設備をはじめとしたライフラインの老朽化

ライフラインの老朽化も日本が抱えるエネルギー問題の一つです。
高度経済成長期に整備された国内のライフラインは老朽化が進み、設備の更新や大規模な修繕が必要な状況にあります。

電柱や鉄塔などが大型台風などに耐えられる設計になっておらず、気候変動への対応ができていないことも問題です。

ライフラインの設備更新は早急に取り組むべき問題ですが、膨大な予算と時間がかかることから十分に進められていません。

また、日本と同じように海外でもライフラインの老朽化は深刻です。

イギリスでは19世紀後半に整備されたライフラインが今でも使用されています。電力設備も老朽化が進んでいますが、石炭火力を老朽化のタイミングで順次廃止することを表明しています。

日本のエネルギーは今後どうなる?

日本のエネルギーは今後どうなる?


ここまで、日本のエネルギーに関する現状を解説していきました。

「エネルギー白書2023」には、現状だけでなく今後の取り組みも書かれています。
最後に、日本のエネルギー問題の今後について見ていきましょう。

徹底した省エネ社会を実現するための制度整備と情報提供

2030年度の温室効果ガス排出削減量の目標達成や、2050年カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーの普及だけでなく省エネ対策も必要不可欠です。

2021年10月に発表された第6次エネルギー基本計画では、2030年度の年間最終エネルギー消費を対策前より原油換算で約6,200万kl削減することが見込まれています。この見込みを実現するために複数の施策に取り組んでいます。

  • 省エネ機器へのラベル表示
  • ZEB・ZEHの実現・普及に向けた支援
  • 道路施設の省エネ化
  • 自動車税・軽自動車税の減免措置 など

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」第2章 徹底した省エネルギー社会の実現とスマートで柔軟な消費活動の実現

再生可能エネルギーの主電源化の促進

再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しないだけでなく、国内での生産が可能なため、普及することでエネルギー自給率の向上にもつながります。

現在、日本では太陽光発電の普及が最も進んでいます。このほか2050年カーボンニュートラルを実現するためには、洋上風力発電も重要とされています。洋上風力発電の導入を促進するため、法律の施行や促進区域の指定などが行われました。

また家庭用太陽光発電の価格低下により、今後も家庭での太陽光発電の導入量は増加していくと考えられます。

再生可能エネルギーを主電源化するためには、企業と家庭だけでなく地域とも共生できるような環境整備が大切です。

参考:経済産業省 資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」

まとめ

今回は、エネルギー白書2023を参考に、日本のエネルギー事情について解説しました。日本はいくつものエネルギー問題を抱えています。それらの問題を解決するために、脱炭素や省エネは必要不可欠です。

また、エネルギー白書を読むことで、国内外のエネルギー問題の現状や今後行われる施策を理解することができます。現状を正しく理解し、国の方針を知ることで、自分たちがどのような取り組みを行うべきか考えやすくなるでしょう。

この記事で「日本のエネルギー問題についてもっと知りたい」と感じたら、エネルギー白書2022を読んでみてはいかがでしょうか。

執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部

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