執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部
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2017年(平成29年)4月から、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法が施行されました。
改正FIT法(固定価格買取制度)の最大のポイントは、これまで再生可能エネルギー電力の発電設備のみを対象としていた認定が、発電事業計画全体を認定対象とすることに変わった点です。
そのため、発電設備から運転、保守点検、廃棄処分まで、広範囲にわたる認定が必要となります。
今回は、改正FIT法について、4月から改正された内容を中心にご紹介します。
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目次
FIT法は国民全体の負担によって、再エネ電力の普及促進を図ることを目的としています。
しかし、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入が急増したことで、国民の負担が増大したことが問題になりました。
FIT法では、太陽光発電や風力発電などの再エネ電力を、長期固定価格で電力会社が買い取ることを義務付けています。
買取費用は、電気料金に「賦課金」という形で上乗せすることで、電気を使用する国民全体が負担する仕組みです。
その結果、再エネ電力の買い取りが増加するにしたがって、負担しなければならない賦課金も増加しました。
固定価格買取制度が始まった2012年度に1,306億円だった賦課金総額は、2013年度に3,289億円、2014年度には6,520億円と倍増して増え続けており、2019年度は2.4兆円にもなりました。
再エネ賦課金は今後も緩やかに増加し続け、2030年度には約3兆円になる見通しです。
FIT法は当初、太陽光発電、風力発電、中小水力発電、地熱発電、バイオマス発電の5種類の再生可能エネルギーすべての普及促進を図ることを目的としていました。
しかし、買取価格設定などで太陽光発電を優遇したこともあり、太陽光発電の導入量が突出して増加しました。
なかでも、10kW以上の産業用太陽光発電設備は2012年7月から2016年10月までの間に30倍近く急増し、10kW未満の住宅用太陽光発電設備でも倍近い伸び率です。
FIT法開始後の太陽光発電の設備認定量は、再生可能エネルギー全体の約9割に上っています。
まず、今回の法改正では、FIT法の認定制度が大きく変わりました。
これまでの認定制度では、「発電設備の効率」や「設備要件を満たしているか」が審査の対象となっており、その結果、認定取得後に長期間にわたって稼働を開始していないものが大量に発生するという問題がありました。
そこで制度を見直し、設備認定の時点で「事業実施の可能性」や「設備の適切性」を厳しく審査することで、未稼働案件を減らし、長期的に安定した発電設備の拡大を目的としています。
従来の認定制度にはなかった新たな基準として、「運転開始後も含めて事業内容が適切かどうか(事業内容の適切性)」「事業が円滑かつ確実に実施される見込みがあるか(事業実施の確実性)」「設備が基準に適合しているか(設備の適切性)」の3つが定められました。
新しい認定基準は、現行制度に加えて新たに9項目の新基準が設置されています。
事業内容においては、設備の保守や点検について4つの基準が新設されました。
未稼働案件の発生を抑えることを目的とした3つの新しい項目が定められています。
特に、接続契約は事業実施の前提となるもので、新認定基準では重要視されています。
注意しなければならないのは、改正FIT法はすでに設備認定を取得済みの場合にも適用されるため、2017年4月1日までに、電力会社と接続契約を締結していなかった場合、旧制度で受けた認定も失効してしまう点です。
しかし現在、電力会社との接続契約に時間がかかっている案件もあるため、認定取得から9カ月の猶予期間を設けています。
接続契約を締結できていない案件は、この猶予期間内に接続契約を結んでおく必要があります。
設備の安全性を確保するため、新たに2項目が追加されました。
事業内容等の標識の掲示は、安全性や環境への配慮、周辺住民に対する管理責任の明確化の観点から求められている項目です。
これまでの認定制度では、設備認定の取得後に系統接続の申し込みをするため、系統接続での調整に時間がかかり契約締結できないことが、未稼働案件が増加する要因となっていました。
新認定制度では、未稼働案件の解消を目的のひとつとしています。
太陽光発電における未稼働案件とは、旧認定制度で設備認定を取得したにもかかわらず、接続契約が未完了で、未稼働となっている案件を指します。
経済産業省資源エネルギー庁によると、2016年度に約6.1万件だった未稼働案件が、2017年3月時点では約31万件に上っています。
新認定制度では、こうした未稼働件数を減らすために、事業計画の認定取得の前提として系統接続の締結を条件としたのです。
新認定制度における事業計画の認定では、認定申請と並行して系統接続の申し込みができるようになりました。
そのため、事業計画の認定取得と接続契約締結の時期がズレることなく、設備の運転を開始することができます。
10kW以上の産業用太陽光発電の場合は、運転開始期限を認定取得後3年、10kW未満の住宅用太陽光発電は認定取得後1年と期限を見直しました。
運転開始期限を過ぎると、10kW以上の場合、電力会社による買取期間が月単位で短縮されることになり、10kW未満では認定が失効してしまいます。
新認定制度では、「みなし案件」という取り扱いが認められています。
みなし案件とは、FIT法が改正される前日(2017年3月31日)までに接続契約を締結している案件については、「新認定制度による認定を受けたもの」とする扱いのことです。
原則として、みなし案件は接続契約に関する書類等を提出し「みなし認定」を受けます。
さらに、みなし認定に移行した時点から6カ月以内に、新認定制度による事業計画を提出する必要があります。
これまで再生可能エネルギーで発電した電気の買い取り先は、「小売電気事業者」でした。
しかし、FIT法の改正後は小売電気事業者の買い取り義務がなくなり、買い取り先が「送配電事業者」に一本化されます。
これは、2016年4月の電力全面自由化への移行に伴うもので、送配電事業者が買い取り義務と接続義務の両方を担うことによって、再生可能エネルギーの供給バランスを安定させることを目的としています。
以前は、地域の電力会社である一般電気事業者が再生可能エネルギー電力の買取義務を負っていました。
電力全面自由化によって、地域の電力会社は「発電」「送配電」「電力小売り」の3部門に分割され、それに伴い再生可能エネルギーの買取義務は、地域電力会社の送配電部門に移行しました。
これにより、小売電気事業者は、原則として再生可能エネルギーの発電事業者から直接電力を調達することができなくなりました。
電力を調達するためには、送配電事業者が卸電力取引市場に引き渡した電力を小売電気事業者が市場で買い付ける「自由買付方式」か、再生可能エネルギーの発電事業者と小売電気事業者が個別に契約を締結し供給する「限定供給方式」を選択しなければなりません。
FIT法が改正される前に契約を締結していた場合は、そのまま小売電気事業者が契約期間満了まで買い取ります。
2017年4月1日以降の契約分からは、送配電事業者が買い取り義務者となりますが、認定から改正法施行日までに十分な期間とされる9カ月を確保できない場合は例外です。
FIT法の改正後も、電力を地産地消として販売することはできますが、「地元の〇〇発電所が発電したFIT電気を供給しています」などのように、地域の再生可能エネルギー発電事業者から調達した電気であることを表示する必要があります。
改正FIT法では、再エネ電気の買取価格の決め方も変わります。
これまで再生可能エネルギーで発電した電力の固定買取価格は、適正な利潤を含めた価格を毎年検討していましたが、今後は電源ごとに中長期的な価格目標が設定されます。
新しい価格の決定方式では、太陽光発電を除く再生可能エネルギー発電の買い取り価格を数年後まで一括して提示しています。
太陽光以外の風力・地熱・中小水力・バイオマスの発電設備は、事業検討から運転開始までのリードタイムが長く、毎年買い取り価格が変更になると事業の見通しがつかないという問題がありました。
買い取り価格が数年先まで固定されれば、将来的に認定を受けたいと検討している事業者がリスクを判断しやすくなります。
再生可能エネルギーの種類や規模によってもリードタイムは異なるため、種類や規模別で設定されています。
産業用の大規模な太陽光発電については、買い取り価格の決定方式に入札制が導入されます。
買い取り費用は、賦課金として各家庭の電気料金にプラスされて企業や家庭で負担しているため、コストの安い事業者を優先することで事業者間での競争を生じさせて、買い取り費用をさらに抑えることを目指しています。
電気の調達期間は20年間とし、全体の募集量と上限価格を決め、その範囲で入札・落札者を決めます。
入札は全国一律で実施され、年に1〜3回の頻度で行われると想定されていますが、当面は2000kW以上の大規模太陽光発電のみが対象となり、すべての産業用太陽光発電が入札対象となるわけではありません。
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FIT法の改正は、再生可能エネルギーの導入促進と国民の負担軽減を主な目的としています。
これまでは、太陽光発電事業者の認定を受けながらも稼働しないところがあり、公平性の部分に問題が生じていました。
今回の新FIT法によって制度の不備が解消され、より充実したものになれば、再生可能エネルギーのさらなる拡大にもつながるでしょう。
太陽光発電に偏った制度を見直し、そのほかの電源の導入促進によって、バランスのとれた再生可能エネルギーを普及させていくことが今後の課題といえます。
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