執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部
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2012年7月から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が導入され、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの普及を後押しされました。
固定価格買取制度においては、電力を買取る際の費用を国民の電気料金に上乗せする形でまかなっております。これを「再エネ賦課金」と呼んでいます。
再エネ賦課金には減免制度もあります。
今回は、再エネの基本と再エネ賦課金の仕組み、計算方法、減免制度の条件や計算方法などについてご紹介します。
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目次
再エネとは再生可能エネルギーの略語であり、自然の力を活用しているため枯渇することがなく、永久的に利用できるエネルギーです。
自然エネルギーともいわれ、地球温暖化の原因といわれるCO2を排出しないクリーンエネルギーとして知られています。
再エネはすでに実用化段階にあり、今後さらなる普及促進の必要性があるエネルギーとして法律で定められています。
再エネには、電気を生成するために利用されているものから、太陽熱のように直接熱利用されているものまでさまざまな種類があります。
まずは、再エネの中から、固定価格買取制度の対象となる5つの再エネについて、それぞれの特徴やメリットを紹介します。
太陽光のエネルギーを太陽電池によって電気に変換して利用します。
唯一再エネの中で一般住宅に設置が可能な発電方式です。
住宅屋根の他にも遊休地や水上など、未利用のスペースを活用して発電可能です。夜間や天候不良のときにはあまり発電できませんが、日照のある限りそのエネルギーは無限です。
個人のお客様でも容易に導入ができる発電方式のため、固定価格買取制度の開始以降の設置数は急激に伸びています。
それに伴い、発電設備の設置コストも下がり続けており、条件さえよければ設置に踏み入る方が多く見られます。
風力発電は風の力で風車を回し、その力で発電機を回転させて電気を創り出します。
他の発電方式と比べて発電コストが低いのと、夜間でも発電できるという点がメリットです。
年間を通して風の吹く地域が適地とされていますが、最近では海上で発電する洋上風力発電が実用化され、島国である日本にとっては洋上風力発電に期待が高まっています。
水力発電は、水の流れや落差など自然の形状を利用して発電します。
大規模な水力発電所は昔から普及が進んでいて開発余地がなくなっているため、農業用水路や小河川を利用した中小水力発電が買取制度の対象です。
大規模水力発電の場合、山岳地域への大規模なダムの建設が必要ですが、中小規模の発電では、地形の変更は最小限で済みます。天候に左右されない安定した発電が可能です。
地下深部の熱水や蒸気をくみ上げて発電する方法です。
地下に掘った井戸に水を注入して、地下の熱で蒸発した水蒸気でタービンを回す発電方法が主流です。
日本は火山国で地熱エネルギーのポテンシャルは大きく、気象条件に左右されることのない安定したエネルギーとされています。
最近では、比較的温度の低い温水から発電をする「バイナリー発電」という方法の発電設備が多く設置されています。
家畜の排泄物やワラ、残木材など、動植物に由来した燃料を燃焼したり、発酵させてガス化したりすることで発電します。
木材チップなどの燃料が普及していますが、建築廃材や産業食用油などの廃棄物を再利用すれば、廃棄物の量自体も削減できて一石二鳥です。
天候に左右されない点がメリットで、最近では、既存の石炭火力発電所で石炭と一緒に木材チップを燃焼する「混焼」という方法もあります。
そのほかにも、太陽の光ではなく熱を直接利用する「太陽熱利用」や、雪が解けたときの温度差を利用した「雪氷熱利用」などが再生可能エネルギーとして活用を期待されていますが、まだ固定価格買取制度の対象とはなっていません。
再エネ賦課金の正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。
私たちが電力会社に支払う月々の電気料金は、従量制供給の場合は以下の方法で算定されています。
再エネ賦課金の料金は電力会社から毎月届く「電気料金のお知らせ(検針票)」に、電力料金の一部として記載されています。
この制度はエネルギー電気の調達に関する特別措置法、通称「再生可能エネルギー特別措置法」により2012年7月から始まりました。
以前は「太陽光発電促進付加金」という名称であったものが2014年9月以降は「再エネ賦課金」として電気料金の一部として徴収されるようになりました。
まずは再エネ賦課金の目的や仕組みなどをご紹介します。
再エネ賦課金は再生可能エネルギーの普及促進を目的としています。
再生可能エネルギーの普及が進むと化石燃料の依存軽減にもつながります。これにより燃料価格変動による電気料金の高騰を抑えられるというメリットがあります。
再エネ普及により電気料金単価が下がるという恩恵を受けられることから、電力会社から電気を買取ったすべての国民から再エネ賦課金を徴収しています。
つまり再エネ賦課金の制度は太陽光発電や水力発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電といった再エネによって発電された電気を電力会社が買取り、買取に要する費用は電気を利用するすべての国民が負担する制度なのです。
また、電力会社が再エネ発電事業者から買取る価格は長期の固定価格であり、その中には事業者の一定の利益も考慮されています。
再エネ事業者が投資目的として安定的に収益をあげられるように価格設定がなされています。事業者としては、再エネの発電設備建設コストの回収の見通しが立てやすくなり、普及がより進むと期待されています。
再エネ賦課金は、有識者で構成される調達価格等算定委員会の意見を踏まえて毎年、経済産業大臣が決定します。
その前提となるのは再エネ買取制度による買取費用です。
再エネ買取価格はそれぞれの再エネの普及状況や事業コストなどを踏まえて検討され、買取価格に基づいて再エネ賦課金の単価が算定されます。
実際に、再エネ賦課金をどのくらい支払っているのか、具体的な例を出して計算してみます。
国民が負担する再エネ賦課金は、月々の電気使用量に比例します。
再エネ賦課金として算定された単価にそれぞれの家庭の電力使用量を乗じた額で求められます。
従量制供給の再エネ賦課金 単価表
年度 | 燃料調整費 |
---|---|
2023年度分 | 1.40円/kWh |
2022年度分 | 3.45円/kWh |
2021年度分 | 3.36円/kWh |
2020年度分 | 2.98円/kWh |
2019年度分 | 2.95円/kWh |
2018年度分 | 2.90円/kWh |
2017年度分 | 2.64円/kWh |
2016年度分 | 2.25円/kWh |
2015年度分 | 1.58円/kWh |
2014年度分 | 0.75円/kWh |
2013年度5月分以降 | 35銭/kWh |
2013年度 4月分 | 22銭/kWh |
2012年度8月分以降 | 22銭/kWh |
例えば1カ月の電力使用量が300kWhの場合、2019年度の再エネ賦課金単価2.95円に300kWhを掛けると、2.95円×300kWh=885円となり、その月の再エネ負担額は885円となります。
再エネ賦課金には、電力消費の多い事業者に対する減免制度があります。
減免制度は、産業の国際競争力の維持・強化の観点から設けられました。
再生可能エネルギー普及のためには電気の買取りに要する費用を確保しなければなりません。
国は再エネ賦課金制度を設け、電気を使用するすべての人・事業者から賦課金を徴収することで再エネの買取に係る費用を賄い始めました。再エネ賦課金は電気使用量に比例して高くなります。
つまり、電気の使用量が多い事業者にとっては再エネ賦課金の負担が重くなってしまいます。
そのため国は一定の要件を満たす事業者に対して特例措置を設け、賦課金を減免する制度を設けました。これが再エネ賦課金の減免制度です。
賦課金減免制度は再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の改正により、2016年11月からルールが見直しされています。
年々増加する再エネ賦課金に対して、減免対象外の電力需給者からの減免制度への理解を得るためにです。
改正後の賦課金減免制度の対象は、電力多消費事業者のうち、売上高千円当たりの電気使用量(電気の使用量に係る原単位)が製造業では業界平均の8倍以上、非製造業では業界平均の14倍以上となる事業者で、かつ製造業・非製造業ともに5.6kWh/千円を超えていることが必要です。
さらに、申請している事業所での年間電気使用量が政令で定める量以上(2019年度は100万kWh以上)であり、原単位(一定量を生産するのに必要な量)の改善のための取り組みを行うことが認定要件となります。
2016年度に減免認定を受けた事業者は、製造業だけでなく、冷凍冷蔵倉庫、下水道事業者やデータセンター等など多岐にわたっています。
減免制度の認定を受けようとする事業者は、定められた様式の書類のほか、決算報告書などの事業売上高や、電気使用量を証明する書類を事業所本社の所在する地域の経済産業局に提出します。
その際、公認会計士、あるいは税理士による確認書類が必要となります。
減免認定の申請期間は、毎年前年の11月頃とされており、期間を過ぎると申請を受け付けられないため注意が必要です。
経済産業局での審査に通過すると、減免認定通知書が事業者に送付されます。
受け取った後は、電気の供給を受ける電力会社に申し出ることで、翌年の再エネ賦課金が減免されます。
減免される割合(減免率)は、事業の種類や事業者の原単位の改善に向けた取り組み状況によって減免率が変動し、その減免率は2割から8割の幅があります。
例えば、製造業で原単位の改善の取り組み状況が優良と認められた場合、減免率は8割になります。
例えば、100万kWhの電気の供給を受ける優良基準を満たす電力多消費製造業者において、仮に減免制度を受けない場合の賦課金金額が295万円とすると、減免制度を受けた場合の賦課金は59万円にもなります。
逆に取り組みが優良と認められなかった場合は、減免率が4割になります。また、2年連続で優良基準を満たせなかった場合は、認定基準そのものを満たしていないと判定されます。
減免率は事業の種類や事業者の原単位の改善に向けた取り組み状況によって変動すると説明しました。
資源エネルギー庁が公表している「賦課金減免制度について」の資料においては、原単位の改善に向けた取り組みの判断は申請事業者の5事業年度分の原単位の推移で評価され、下記要件のいずれかを満たすかどうかで優良か否かが判定されます。
※直近の事業年度において優良基準を満たさない場合は、認定基準の判断基準として6事業年度前の原単位を要求されます。
直近事業年度に係る原単位変化率の相乗平均:(T4×T3×T2×T1)^(1/4)=100.23% ・・・105%以下
直近2事業年度の原単位の推移:K3>K2、K2優良基準を満たさないケース
直近事業年度に係る原単位変化率の相乗平均:(T4×T3×T2×T1)^(1/4)=113.36% ・・・105%以上
直近2事業年度の原単位の推移:K3>K2、K2
再エネの導入拡大には、発電した電気の買取費用を高くすることが効果的です。
しかし、買取費用を増加させると再エネ賦課金の増大、つまり、国民の電気代の上昇となり負担増加につながります。
電力中央研究所が公表する「固定価格買取制度(FIT)による買取総額・賦課金総額の見直し」においては、固定価格買取制度の買取総額が2030年単年でも4.7兆円、累計買取り総額では2030年までに約59兆円、2050年までに約94兆円に達すると記載されています。
仮に買取総額が4.7兆円となった場合の国民1人当たりの再エネ賦課金の負担額は1,300円ほどまで増大する見込みです。
国民負担を抑えつつ、コストの上昇が企業の成長を妨げることにならないよう、いかに再エネ発電事業者の利益を増やし、普及促進を図るかが今後の課題といえるでしょう。
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