太陽光発電には、システム容量によって「低圧」「高圧」「特別高圧」に分かれていることをご存知でしょうか?
この記事では、「低圧」「高圧」「特別高圧」それぞれの違いや特徴についてご紹介していくとともに、それぞれのメリット・デメリットなども解説していきます。
「これから太陽光発電を設置しようと思っているけど、低圧か高圧かで迷っている…」
「中古で購入予定の太陽光発電設備に”低圧”とあるが、どういう意味?」
こんな疑問を持っている方には、ぴったりの内容です。
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目次
低圧・高圧・特別高圧の違い
ここでは、太陽光発電の低圧・高圧・特別高圧の違いについてご紹介していきます。
低圧(小規模発電)
低圧(小規模発電)とは、「定格出力が50kW未満」の太陽光発電を指し、電気事業法上では「一般用電気工作物」と定義されています。
なお、低圧(小規模発電)ではその他に「交流電圧で600V以下」および「直流電圧で750V以下」という条件も、電気事業法によって定められています。
高圧(大規模発電)
高圧(大規模発電)とは、「定格出力が50kW以上~2000kW未満」の太陽光発電を指し、電気事業法上では「自家用電気工作物」と定義されています。
なお、高圧(大規模発電)ではその他に「交流電圧で600Vを超える」および「直流電圧で750Vを超える」という条件も、電気事業法によって定められています。
また、高圧(大規模発電)では、低圧の太陽光発電設備に比べて、電気事業法上に則り以下の義務が発生します。
- 経済産業省令で定める技術基準に適合するように電気工作物を維持する義務。(法第39条)
- 電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を定めて届け出る義務。(法第42条)
- 電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために、電気主任技術者を選任して届け出る義務。(法第43条)
なお、経済産業大臣又は産業保安監督部長の承認を得て、自家用電気工作物に関する保安管理業務を外部に委託することもできます。
- 使用の開始前に技術基準に適合することを自ら確認し、その結果を届け出る義務。(法第51条の2)
高圧の太陽光発電設備の義務を簡単にまとめると
上記で高圧の太陽光発電設備に関する義務を記載しましたが、「何のことかよくわからない」という人も多いと思いますので、こちらではわかりやすい言葉で再度ご紹介していきます。
- 保安規程を定め、管轄の消防署等へ届け出る義務
- 電気主任技術者の選任を行い届け出る義務
- 第一種工事士または認定電気工事従事者による作業義務
- キュービクル(変圧器)の設置が必要
特別高圧(法人対象)
特別高圧(法人対象)とは、「定格出力が2,000kW以上」の太陽光発電を指し、一般的に「メガソーラー」などとも呼ばれています。なお、その他に「交流電圧、直流電圧ともに7,000Vを超える」という条件も、電気事業法によって定められています。
また、特別高圧に該当する太陽光発電設備を設置する場合、高圧の義務に加えて以下の義務が発生します。
- 設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出る義務。(法第48条)
特別高圧に該当する大規模太陽光発電システムは、基本的には大企業が事業で行うケースがほとんどのため、個人等の太陽光発電事業者にはあまり関係ないかもしれません。
定格出力とは?
上記の低圧・高圧・特別高圧の条件で出てくる「定格出力」ですが、「太陽光パネルの合計出力(総容量)」と「パワーコンディショナーの合計出力(総容量)」の、いずれか低い方を定格出力としていいことになっています。例えば、
- パネル合計出力:80kW
- パワコン合計出力:49kW
上記の太陽光発電設備を設置したとすると、パワコン出力の「49kW」が定格出力となるため、「低圧(小規模発電)」の太陽光発電設備と認定されることになります。
ちなみにこの「パワーコンディショナーの合計出力(総容量)以上に、太陽光パネルの合計出力(総容量)を大きくすること」を、「過積載」と呼びます。
太陽光発電の「過積載」のメリット
ここでは、パワーコンディショナーの合計出力(総容量)以上に、太陽光パネルの合計出力(総容量)を大きくする「過積載」のメリットについて、簡単にご紹介します。
本来、太陽光パネルで発電した電気は、パワーコンディショナーの出力以上には有効な電気として活用することはできません。
しかし、太陽光パネルの出力がピークを迎えるのは、日中のほんのわずかな時間だけです。逆を言えば、日中のピーク時間帯以外は、太陽光パネルの合計出力を下回る発電量しか確保できないということです。
「過積載」を行うことで、ピーク時にパワコンの容量を超えて発電可能な分の電力は無駄になってしまいますが、それ以外の時間帯は発電量が増えるため、全体的に見ると発電量が増えるというメリットがあります。
また、太陽光発電設備を「低圧(小規模発電)」にしておけるため、高圧にすると発生するさまざまな義務や追加費用を回避することができるというメリットも存在します。
低圧・高圧・特別高圧の違いまとめ
ここでは、上記でご紹介した低圧・高圧・特別高圧の違いを、表でまとめて分かりやすくご紹介していきます。
区分 | 定格出力 | 交流電圧 | 直流電圧 |
低圧 | 50k未満 | 600V以下 | 750V以下 |
高圧 | 50kW以上 | 600Vを超え7,000V以下 | 750V超え7,000V以下 |
特別高圧 | 2,000kW以上 | 7,000V超 | 7,000V超 |
低圧・高圧・特別高圧のメリット・デメリット
ここからは、低圧・高圧・特別高圧それぞれのメリット・デメリットをご紹介していきます。
低圧連系のメリット・デメリット
低圧連系(定格出力50kW未満)の太陽光発電におけるメリット・デメリットは以下のとおりです。
低圧連系のメリット
- 高圧の場合に必要となる「保安規程の届け出」や「電気主任技術者の選任」といった義務が必要ない。
- 高圧以上に比べて、初期費用やランニングコストが安く済むので、比較的手軽に開始できる。
- 高圧や特別高圧よりも、用意する土地面積が小さくて済む。
- 高額な費用がかかるキュービクル(変圧器)を設置しなくて済む。
- 第二種工事士よる作業が可能なので、ハードルが低い。
- 高圧や特別高圧に比べて、手続きや工期が短いため、比較的早い段階で売電収入を得ることができる。
低圧連系のデメリット
- システム容量1kWあたりの費用が、高圧以上にくらべて高くなる。(ただし必要な総費用は安い)
- 容量50kW程度の太陽光パネルを設置できる土地は、坪単価が高い場合がある。
- 小規模の太陽光発電システムの場合、必要な費用に対して十分な収入を上げられない可能性がある。
禁止になった「低圧分割」とは?
「低圧分割」とは、高圧の太陽光発電を、50kW未満ごとの低圧の太陽光発電設備として申請して、高圧以上で発生する義務を回避する方法です。
例えば、システム容量が200kWの太陽光パネルを設置できる土地の場合、49.5kWの太陽光発電システムを4つ設置して、それぞれ低圧認定を取得するといった具合です。
しかしながら、この「低圧分割」は2014年4月から、以下のような内容で禁止処置が施されました。
- 同じ申請者から、同時期・近い時期に複数かつ同じ種類(低圧)の発電設備の申請を禁じる。
- 申請を行う複数の低圧の太陽光発電設備を設置する土地が互いに近く、実質的にひとつの場所であると認めることができる土地での申請を禁じる。
高圧連系のメリット・デメリット
高圧連系(定格出力50kW以上~2000kW未満)の太陽光発電におけるメリット・デメリットは以下のとおりです。
高圧連系のメリット
- 低圧に比べて発電量が多いため、売電収入が増える。
- 低圧の太陽光発電設備に比べると、1kWあたりのシステム単価が安くなる傾向にある。
- 1kWあたりの費用が安くなり、売電収入も増えるため、投資の利回りも高くなる。
高圧連系のデメリット
- 太陽光パネルの枚数やパワーコンディショナーの数が増えるため、初期費用が低圧よりも高額になる。また、キュービクル(変圧器)の設置などで更に費用がかかる。
- メンテナンス費用や電気技術主任技術者の委託などにより、低圧よりも高額なランニングコストがかかる。
- 太陽光発電の設置などに関して、第一種工事士または認定電気工事従事者による作業が必要になる。
- 「保安規程の届け出」や「電気主任技術者の選任」といった義務が発生するため、低圧に比べて手続きが複雑になる。
特別高圧連系のメリット・デメリット
特別高圧連系(定格出力2000kW以上)の太陽光発電におけるメリット・デメリットは以下のとおりです。
特別高圧連系のメリット
- 高圧よりも1kWあたりの導入単価が更に下がる。
- 発電量が膨大になるため、非常に高額な売電収入が期待できる。
特別高圧連系のデメリット
- 売電価格が固定価格買取制度ではなく、入札制度によって決定される。(より売電単価が安くなりやすい)
- 電気主任技術者の外部委託が不可能になる。
- 設置工事の30日前までに工事計画届出書を届け出る義務が発生する。
- 行政から供給電力量の制限を受ける可能性がある。(電力を買い取ってもらえないリスクがある)
- 場合によっては、電力会社への送電線や鉄塔などを、事業者の負担で新設する必要があるため、余計な費用が発生するリスクがある。
高圧・特別高圧で必要になる費用
ここでは、高圧・特別高圧の場合に必要になる費用について解説していきます。
●キュービクル設置費用:100万円~
●電気技術主任技術者(委託費)
- 50kW~100kWクラス:年間6万円~/20年間120万円~
- 500kW~1000kWクラス:年間100万円~/20年間2000万円~
●電力会社への協議申請:21万円
また、パネル容量が大きいほど、必要な太陽光パネルの枚数も多くなりますので、太陽光発電設備の規模によって必要になる初期費用やメンテナンス費用は高くなります。
※一例の費用となります。
事業計画認定の認定手続・新規認定申請の流れ
ここでは、事業計画認定の認定手続・新規認定申請の流れをご紹介していきます。
電子申請の流れ
①申請にあたって、事業計画策定ガイドラインを必ず確認する。
②「再生可能エネルギー電子申請」のサイトにて、ユーザ情報を登録しログインIDを取得する。
③②で登録した「再生可能エネルギー電子申請」のサイトにて、申請情報を入力して添付書類をPDF又はZIP形式でアップロードする。
④正式な申請方法は、低圧または高圧によって以下のように手続きが異なる。
低圧(50kW未満)の太陽光発電の場合
事業者に申請内容の確認要請メールが送られるので、「再生可能エネルギー電子申請」サイトから申請内容を確認した上で「承諾」または「拒否」を選択する。
承認を行ってから審査が開始され、手続きに不備が無ければ大体3ヶ月程度で認定が下りる。
高圧(50kW以上)の太陽光発電の場合
必要事項を入力したあとで申請書を出力し、以下の書類について太陽光発電設備を建設する都道府県を管轄する経済産業局へ送付する。
- 申請書
- 添付書類
- 返信用封筒(切手を貼付の上、返送先の宛名・住所を記載)」
※受付印を押印した申請書の写しが必要な場合、返信用封筒を2部同封してください。
申請から認定までは、手続きに不備が無い場合で大体3ヶ月程度かかります。
⑤認定が行われた場合、低圧または高圧によって以下のように手続きが異なる。
低圧(50kW未満)の太陽光発電の場合
認定が行われたら、事業者及び登録者に対してメールで認定通知が届く。
また、「再生可能エネルギー電子申請」のサイトにて認定通知書のダウンロードが可能になる。
高圧(50kW以上)の太陽光発電の場合
認定通知書が申請者に届く。
紙申請の流れ
大筋は電子申請の場合と同様ですが、必要書類をPCからアップロードすることはできず、直接送付する必要があります。
詳しくは、以下のページをご覧ください。
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まとめ
3つの違いを簡単にまとめると、
・低圧:システム容量(定格出力)が50kW未満
・高圧:システム容量(定格出力)が50kW以上~2000kW未満
・特別高圧:システム容量(定格出力)が2,000kW以上
となっています。
また、高圧以上では「保安規程の届け出」や「電気主任技術者の選任」といった義務が必要になる他、高額(100万円以上)なキュービクル(変圧器)の設置も必要となります。
そのため、「はじめて太陽光発電を設置する」というような方には、低圧がオススメです。
なお、特別高圧は主に大企業が事業として行う「メガソーラー」と呼ばれる太陽光発電になるので、個人の事業者等にはそこまで関係はないかもしれません。
これから太陽光発電を設置する予定の場合は、低圧・高圧・特別高圧それぞれのメリット・デメリットを理解した上で設置することが重要です。
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