執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部
ゆめソーラーマガジンは、福岡・佐賀・熊本・鹿児島の太陽光発電・蓄電池専門店「ゆめソーラー」が運営するオウンドメディアです。太陽光発電・蓄電池に関するノウハウを中心に、再生可能エネルギーや環境に関するお役立ち情報を発信しています。
VPP(バーチャルパワープラント)は太陽光発電のような小規模な発電所や点在する蓄電システムを統括制御することで、主に都心部において1つの発電所のように機能させるシステムであり、仮想発電所とも呼ばれます。
エネルギーの地産地消を実現化させる近未来のインフラとして注目を集めています。この記事では、VPPの概要やメリットなどについてご説明していきます。
目次
以下のような電力資産をまとめ、ひとつの発電所のように機能させるシステムことをいいます。
VPPのメリットには、主に以下の3つが存在します。
VPPによる最大のメリットは、再生可能エネルギーの課題の一つでもある「電気の需要と供給のバランス」を消費者側で調整できるようになる点です。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、天候などによる影響が大きくでやすいことが、しばしば電気の需要と供給のバランスに影響を与えることがあります。
従来であれば、出力制御などの電気の供給側の努力でしかこの問題は回避できませんでしたが、VPPによって電力需要量を、供給量に合わせることが可能となります。
VPPによって、季節ごとの電力需要を平均化する「電力需要の負荷平準化」も可能となります。従来は夏場などの電力需要が高い季節に合わせて発電設備を維持管理する必要がありますが、電力需要のピーク時間帯は1年通しても一時的なものです。こうした発電設備を維持するには大きなコストがかかります。
VPPにより消費者側の電力需要量を供給量に合わせることが可能になったため、こういった社会にとっての無駄なコストも、削減が可能になります。
VPPには「再生可能エネルギーの普及」もメリットとして挙げることができます。
VPP自体、再生可能エネルギーの普及が必須条件ではあるのですが、今後の技術の確立や、ERAB事業の拡大にともない、創エネシステムの普及も期待されています。
VPPを通じて、一般の消費者(需要家)も、積極的に省エネに関わる仕組みが確立されつつあります。そのひとつがネガワット取引です。
ネガワット取引とは、アグリゲーターからの要請に応じ、消費者(需要家)が電気を省エネ(抑制)し、その省エネした電気量に応じて事業者から報酬が支払われるという仕組みです。
こういったネガワット取引の仕組みが将来的にVPPによってしっかりと確立されれば、電気の消費者(需要家)が今よりも積極的に省エネに関われるようになります。これにより、さらなる省エネの促進が期待されています。
VPPを実現するためのポイントは、主に以下の3つが存在します。
創エネとは「電気を創り出す」という意味です。太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーによる発電を示し、VPP実現には家庭や工場に十分な太陽光発電などの創エネ施設が普及している必要があります。
蓄エネとは「電気を蓄える」という意味です。VPPにおける蓄エネは、主に蓄電池などの蓄電設備のことを示し、住宅などの家庭用蓄電池や、工場などの業務用蓄電池など、蓄電・蓄エネ設備が十分に普及している必要があります。
最近では一般家庭でも身近になった省エネですが、VPPにおける省エネとは以下の2つに大別されます。
「デマンドレスポンス」とは、電気の供給量と需要量をあわせる「同時同量」という電力のルールを、従来の供給側(電力会社側)が「供給量を需要量」に合わせるのではなく、需要家側(消費者側)が「需要量を供給量に合わせる」という考え方です。
こうした省エネ技術がVPP実現には欠かせません。
VPP事業が進む背景には、「太陽光発電や蓄電池などの普及」、「IoTやブロックチェーンなど最新技術の進歩」、「電力自由化による市場の活性化」などがあります。
省エネへの意識が進む近年では、太陽光発電や蓄電池の導入が一般家庭でも普及しつつあります。
「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」という3つの要素を消費者側で制御できるようになったことで、電気を使う側がピークカットなどに応じて電力の需給調整を行う「デマンドレスポンス」が可能となりました。
これにより、VPPの実現に大きく前進しました。
VPPが実現可能な事業として推進されている背景には、IT技術の進化があります。
たとえばモノとモノを繋ぐ「IoT(Internet of Things)」技術の発展によって、様々な場所に点在している発電設備や蓄電設備を相互に制御し、遠隔管理できるようになりました。
また、仮想通貨などでも活用されているブロックチェーン技術によって、今後は電気を使用する人が電気を売る側になるなど、電力取引の活性化も期待されています。
2016年の4月に行われた法律改正により、一部の電力会社により独占されていた電力小売が事業化されました。これにより、新しい電力会社が次々と誕生して、「電気の価格競争」が起こることが期待されています。
新しくできた電力会社では、実際にVPPの実現に欠かせない太陽光発電や蓄電池向けの電力プランも発表されています。
また、政府がすすめるZEH(ゼロエネルギーハウス)用のお得な電力プランなども用意されており、VPPに適した環境の広がりに一役買っています。
経済産業省の補助事業として「VPP構築事業費補助金」があります。
政府は、2020年まで行う「VPP構築実証事業」通じて、VPPの制御技術を50メガワット以上確立さえることを目標としています。この補助金のために組まれている予算は2018年度が41億円で、すでに「早稲田大学」や「東京電力パワーグリッド株式会社」、「関西電力株式会社」などに交付されています。
経済産業省から2010年に「次世代エネルギー・社会システム実証地域」として選ばれた神奈川県横浜市は、これまで「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証事業」を推進してきました。
横浜市をモデルとして、エネルギーの需要と供給のバランスを最適化するためのVPPシステムの導入を企業と連携して取り組んでいます。
また横浜市では「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証事業」よって培われたノウハウを活かし、2016年~2017年の2年間で、地域防災拠点に指定されている横浜市内の小中学校において、公民が連携してVPP構築事業に取り組みました。
上記のVPP実証を踏まえた横浜市の今後の課題は、小中学校以外の公共施設や、災害時拠点しての役割も期待されているコンビニなどへのVPP事業の展開が望まれています。また、二酸化炭素の削減や、電気自動車(V2H)の活用など、都市全体の電力リソースを活用したVPP事業も予定されています。
上記で紹介した横浜市以外でも、「東北電力」「早稲田大学」「東京電力パワーグリッド株式会社」「関西電力」などの実証事例が多数報告されています。
詳しい報告内容は、SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)のWEBサイトをご覧ください。
再生可能エネルギーの先進国であるドイツは、VPP事業でも日本より先駆けています。
「ネクストクラフトヴェルケ」社はドイツでVPP事業を展開する企業の1つです。4,000メガワットを超える電力資源を有し、大規模なVPPを運営してエネルギー市場のバランス維持や、気象データ、電力ネットワーク情報、VPP実績データなどを活用したビジネスを生み出しています。
また、その他にもフランスやアメリカでVPPによる事例が報告されています。これら諸外国のVPP事例を参考にして、日本におけるVPPの発展に役立てていくことが期待されています。
この記事では、VPP(バーチャルパワープラント)に関してご紹介してきました。
VPPは、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーや、蓄電池などの蓄エネ施設、さらにデマンドレスポンスやネガワットなどの省エネを組み合わすことで電力資源とし、それを事業者が制御・管理することで実現しています。
日本ではまだまだ発展段階のVPP事業ですが、政府と民間が連携して実証を行うことで、徐々に最適な形が見え始めています。
VPPは、「電力需要の季節ごとの格差」など、日本が抱える様々な電力問題や、二酸化炭素など温室効果ガスの削減に対する最適なアプローチとして、今後さらなる発展が期待されています。
記事をシェアする
年中無休 10:00~20:00 (年末年始を除く)
Contact
太陽光発電や蓄電池のことや費用についての
ご質問・ご相談はお気軽にご相談ください。