【再エネお預かりサービス】太陽光発電の余剰電力預かりサービスについて

2019.11.27

太陽光発電の再エネお預かりサービスは仮想蓄電池とも呼ばれており、蓄電池を購入しなくても太陽光発電の余剰電力を電力会社に預けておけるサービスです。

太陽光発電の固定価格買取制度が満了を迎えるご家庭向けに、東京電力をはじめとしたほとんどの一般電気事業者がこのサービスを開始しています。

この記事では仮想蓄電池と呼ばれる太陽光発電の再エネお預かりサービスがどのようなサービスなのか、その仕組みとメリット・デメリット、各電力会社の再エネお預かりサービスの概要について解説していきます。

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目次

再エネお預かりサービスの仕組み

再エネお預かりサービスは仮想蓄電池とも呼ばれていますが、仮想という名の通りどこにも蓄電池は使われていません。

太陽光発電で発電した電力のうち、余剰電力は売電と同じ原理で送配電網に逆潮流されます。

逆潮流された余剰電力は電力会社側の蓄電池に蓄えられているわけではなく、ただ単に送電網を流れるだけです。流れた電力は電力を購入している誰かが使うことになります。

預けた余剰電力の電力量は計測されており、購入する電気量から相殺したり割引価格で後から利用したりできるのが再エネお預かりサービスの仕組みとなります。

つまりサービスの利用者は預けた電力量分を月々の電気料金から割り引いたりすることで余剰電力を有効に活用できるサービスなのです。

再エネお預かりサービスのメリット

次に再エネお預かりサービスのメリットについて解説します。

高額な蓄電池の導入費用がかからない

家庭用蓄電池を導入して電力の自家消費率を高め、買う電力を減らすことが太陽光発電の卒FIT対策として有効と考えられています。ただし、家庭用蓄電池の価格は100万円~250万円程度かかります。

購入価格がネックとなる家庭用蓄電池に対し、仮想蓄電池となる余剰電力の預かりサービスでは蓄電池を購入する必要はありません。月額利用料がかかるサービスが多いですが、10年間程度の利用であればトータル利用料も蓄電池ほどはかかりません。サービスによって価格は異なりますが、月額4,000円とすれば10年で480,000円のランニングコストがかかることになります。再エネお預かりサービスは高額な蓄電池の導入費用をかけずに蓄電池を設置したようなサービスを受けることができます。

買う電力量を実質的に削減できる

蓄電池がないご家庭の場合、日が当たる日中は太陽光発電で発電することにより電気代を削減できます。しかし電力使用が多い日中や日照量が少ない夜間や雨の日など太陽光発電が稼働しない場合は電力を買わなければなりません。

そこで、余剰電力を預けておけば電力購入量から預けた電力量分を差し引くことができ、実質的に買電量を減らすことができるのです。

なお、固定価格買取制度の満了を迎えたご家庭(卒FIT)において、引き続き売電を行う場合は売電単価が大幅に下がります。

一般的な売電単価は7円/kWh~12円/kWh程度です。一方で購入する電力の1kWhあたりの単価は26.46円/kWh(※1)です。単純に考えれば、安い売電単価で太陽光発電の余剰電力を売るよりも、貯めておくことで高い単価の電力を買わないようにするほうが経済的にはお得というのは蓄電池に対する一般的な考え方であり、同じことが再エネお預かりサービスにも言えます。

※1経済産業省 第91回調達価格等算定委員会資料より

【デメリット】再エネお預かりサービスには盲点も

再エネお預かりサービスには、以下のようなデメリットがあるため注意してください。

災害時は役に立たない

現時点では、家庭用蓄電池には住宅用太陽光発電のような高い経済メリットは見込めません。しかしながら、家庭用蓄電池の購入者が昨今増え続けている理由としては、東日本大震災や台風15号といった未曽有の災害に対する防災意識の高まりがあります。

蓄電池を使った災害時のバックアップ電源の確保や、なるべく自宅内で自家消費することにステータスを感じる人が増えているためです。

一方で仮想蓄電池と呼ばれる再エネお預かりサービスは蓄電池のような高額な導入費用はかかりません。しかし、そもそも災害等による停電時は電力会社からの電力供給がストップするため、預けた電力を供給してもらうことすらできません。仮想蓄電池とはいえども蓄電池本来のメリットである災害・停電時のバックアップ電源としての機能がないことがデメリットの1つ目です。

メリットが出る家庭は限定される

再エネお預かりサービスには蓄電池の機器代や工事費などはかかりません。しかしサービスのほとんどは月額利用料金が発生します。果たしてこの月額利用料の元を取れるのでしょうか。

結論をいうと、メリットが出るケースは、余剰電力を預けつつも昼間に電力を購入する必要があるようなご家庭です。昼間の電力使用量が少ないようなご家庭では月額利用料以上のメリットは出にくいため売電したほうがお得といえます。また、停電時は蓄電池のように預けた電力を使用できないため、災害時には役に立たないことが一番のデメリットといえます。

昼間に太陽光発電だけでは電力をまかないきれずに購入が日常的に必要な家庭で、かつ余剰電力が十分にあれば再エネお預かりサービスの効果を発揮できるかもしれません。

一方で、昼間の時間帯はあまり電気を使わないご家庭の場合、再エネお預かりサービスを利用しても預けた電力の使い道が夜間の安い電気代を相殺するために使われるため経済メリットは小さいでしょう。

再エネお預かりサービスの経済メリットは電力会社、契約プラン、太陽光発電の発電状況などによってメリットが異なってきます。
おそらくは売電したほうがメリットが出るというご家庭が多いと思われます。
また、災害時にも電力を活用したいのであれば蓄電池を備えておくべきです。再エネお預かりサービスは災害時には意味をなしません。

蓄電池導入と比べれば再エネお預かりサービスの方が導入資金は安いです。しかし何のために再エネお預かりサービスを利用するかを考えてみましょう。
経済メリット優先であればほとんどのご家庭では売電したほうがいいです。災害時の非常用電源のために備えたいのであれば蓄電池を導入するべきでしょう。

蓄電池のメリットとデメリットに関しては以下のコラムで説明しています。

<蓄電池を太陽光発電と併設するときのデメリットとメリット>

一般電気事業者のサービス概要

九州電力:再エネお預かりサービス

九州電力の再エネお預かりサービスは2020年11月1日より開始しました。対象は卒FITの方のうち以下の電力プランに契約されている方となります。

  • 季時別電灯
  • 電化でナイト・セレクト
  • 時間帯別電灯(10時間型)

また離島供給約款で契約中のお客さまは対象外です。

九州電力の再エネお預かりサービスには2つのプランがあります。

  1. スタンダード:月額4,980円のサービス料金で月300kWhを上限として余剰電力を預かってもらえるサービスです。
  2. ライト:月額2,500円のサービス料金で月100kWhまで余剰電力を預かってもらえます。

お預かり電力量の上限を超えた余剰電力は九州電力の売電単価(2023年度は7円)にて買取が行われます。

その他サービス詳細は九州電力ホームページをご覧ください。

【九州電力 お預かりプラン】
https://www.kireilife.net/contents/menu/saieneoazukari/

東北電力:ツナガルでんき

東北電力の「ツナガルでんき」ではFIT買取期間満了後のご家庭を対象とした複数の選べるサービスがあります。その中の1つとして「でんきお預かりサービス」があります。

2つのプランがあり、セルフプランでは太陽光発電の余剰電力を東北電力が預かり、購入した際に預けた電力量分を差し引けるサービスです。家族シェアプランは預かった余剰電力を離れて暮らす家族と共有できるプランです。

差し引ける電力量は月300kWhを上限とし、電力の購入量が預けた電力量より少ない場合は不足分を翌月以降に繰り越しされます。ただし3月末時点で残高がある場合は「シンプル買取」の売電単価に応じて売電が行われます。

サービス適用には月額料金が発生し、その他指定のサービスに加入する必要があります。

その他サービス詳細は東北電力ホームページをご覧ください。

【東北電力 ツナガルでんき】
https://tsunagaru.tohoku-epco.co.jp/menu/

東京電力エナジーパートナー(TEPCO):再エネおあずかりプラン

東京電力エナジーパートナー(TEPCO)では「再エネおあずかりプラン」を展開しています。

太陽光発電の余剰電力をTEPCOが預かったとみなし、預けた電力を使用した電力に充当することで余剰電力を自家消費したものとみなすプランです。充当する電力の単価は、単価が高いものが優先的に適用されます。

電力量は毎月250kWhを上限に預けられます。ただし使用電力量が250kWh以下の場合、使用電力量を上限としてそれ以上の余剰電力量は通常の売電単価で買取られます。

その他サービス詳細は東京電力エナジーパートナー(TEPCO)ホームページをご覧ください。

【東京電力エナジーパートナー 再エネおあずかりプラン】
http://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/plan.html

中部電力:再エネスマートプラン

中部電力の卒FIT向けサービスのうち「再エネスマートプラン」は余剰電力を自分で使ったものとみなして、電気使用の時間帯別の割引額に応じて電気料金を削減できるプランです。

加入している電気料金メニューや時間帯によって割引単価が異なるのが特徴です。割引の単価は7円/kWh~12円/kWhのため、実質単価相当で余剰電力を買い取るサービスとなっています。

その他サービス詳細は中部電力ホームページをご覧ください。

【中部電力 再エネスマートプラン】
https://katene.chuden.jp/sotsufit/smart.html

北陸電力:わくわく電気預かりプラン

北陸電力のわくわく電気預かりプランは、預かった電気を契約者が他の時間帯に利用したとみなせるプランです。
このプランでは毎月の電力の利用状況および加入している電気料金メニューごとに設定された買取単価と余剰電力量に応じて北陸電力が余剰電力を買取ってくれます。
買取を行ってもらえる余剰電力量の上限は家庭の電力使用量となります。
電力の使用量を上回った余剰電力量については、加入している電気料金メニューごとの最も低い買取単価で買取が行われます。

その他サービス、加入条件詳細は北陸電力ホームページをご覧ください。

【北陸電力 わくわく電気預かりプラン】
http://www.rikuden.co.jp/koteikaitori/kaitorimenu.html

関西電力:貯めトクサービス

関西電力の貯めトクサービスは、太陽光発電の余剰電力を関西電力が預かったとみなし、預けた電力量に応じてお得にお返しするサービスです。
預けられる容量に応じた3段階のプランがあり、そのうち貯めトクサービスLは容量無制限で余剰電力を預けられます。
預けた余剰電力のうち、購入電力量を上回る電力および預けられる容量を上回る電力量は関西電力が定めた単価で売電を行います。

その他サービス、加入条件詳細は関西電力ホームページをご覧ください。

【関西電力 貯めトクサービス】
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/pdf/0904_1j_01.pdf

中国電力:ぐっとずっと グリーンフィット

中国電力が太陽光発電の余剰電力を預かり、夜間の電力使用として割り当てるプランが「ぐっとずっと グリーンフィット」です。
仮想預入サービスのメリットとして余剰電力の預け入れおよび夜間に充当した電力量に応じてエネルギアポイントが付与されます。

その他サービス、加入条件詳細は中国電力ホームページをご覧ください。

【中国電力 ぐっとずっと。グリーンフィット】
http://www.energia-support.com/greenfit/plan-oazukari.html

四国電力:四電ためトクサービス

四国電力の四電ためトクサービスは、太陽光発電の余剰電力を四国電力に預けたものとみなし、預かった電気量相当分を電気料金から割引するサービスです。

預けることができる電力量は1月に150kWhまでで、預けた電気量相当分を月々の電気料金から割り引きます(ためトク割)。電力の使用量に応じて、料金単価の高い順に割引を行います。
また、通常の売電単価は7円/kWhですが、150kWh以上の余剰電力は8円/kWhで買い取ってくれるものとして、その相当分を電気料金から差し引きます。

その他サービス、加入条件詳細は四国電力ホームページをご覧ください。

【四国電力 四電ためトクサービス】
https://www.yonden.co.jp/customer/price/plan/tametoku.html

まとめ

固定価格買取制度の終了後の選択肢は大きく分けて2つ。
「安価な単価で引き続き売電を行う」か、「蓄えて自家消費率を高める」か。
余剰電力の預かりサービスはその双方を兼ね備えた画期的なサービスです。しかし電力プランや電力の使用状況などによってはメリットが出ないケースがあります。
さらに停電時の非常用電源として活用できない点は補えません。災害時の非常用電源に重みをおくのであればやはり家庭用蓄電池が必要となります。

まずは余剰電力の活用方法のどこに重点をおくのかを決めましょう。卒FIT向けサービスは多岐にわたるため、シミュレーションを行いご自身のライフプランにあった有益のあるサービスを利用するようにしましょう。

執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部

ゆめソーラーマガジンは、福岡・熊本・佐賀の太陽光発電・蓄電池専門店「ゆめソーラー」が運営するオウンドメディアです。太陽光発電・蓄電池に関するノウハウを中心に、再生可能エネルギーや環境に関するお役立ち情報を発信しています。

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