電力自由化の仕組みをわかりやすく解説!自由化で広がる電力の未来

2018.02.01

電力自由化は、「電力の安定供給」「電気料金の抑制」「消費者の選択と事業者の事業機会の拡大」の3つを目的として進められてきました。

制度自体は、2000年から部分自由化の形でスタートし、2016年4月の小売り及び発電の全面自由化によって総仕上げとなっています。

今回は、電力自由化の経緯や仕組み、その目的などをわかりやすく解説しながら、これからの電力自由化の在り方についてご紹介します。

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目次

工場から家庭へ。電力自由化の歴史

電力の小売全面自由化は、これまで4段階を経て順次自由化の部門が拡大されてきました。

2016年4月の全面自由化までの歴史を見ていきましょう。

2000年3月

2000年3月に最初の小売自由化が始まりました。

まず自由化されたのは、特別高圧区分で2,000kWを超える需要家です。

大規模工場や商業ビルなどが対象範囲で、初めて一般電力会社以外の電力会社からも電気を買えるようになりました。

2004年4月~2005年4月

2004年4月から新たに高圧区分で500kW以上の需要家まで拡大し、中規模工場やスーパー、中小ビルなども自由化の範囲となりました。

さらに2005年4月からは50kW ~500kW未満の小規模工場など高圧需要家も含まれ、国内電力量の62%まで自由化の対象が広がりました。

2016年4月

2016年4月からは、残されていた一般家庭や商店などの低圧区分まですべてが自由化されました。

そのため、この段階での自由化のことを、電力の「小売全面自由化」と呼んでいます。

どこが自由化になった?電力事業の流れ

電力自由化によって電力事業はどう変わったのでしょうか。

発電事業者

発電を行う電気事業者は、電力自由化をきっかけに電力会社ごとの区別をなくし、「発電事業者」として統一されています。

以前は、一般電気事業者と呼ばれる地域の電力会社10社に加えて、卸電気事業者(日本では電源開発と日本原子力発電の2社)、新電力会社と呼ばれる特定規模電気事業者、特定地域の需要家に電気を供給する特定電気事業者などに分けられていました。

現在はこれまでの複雑でわかりにくい体制を改め、すべて発電事業者となっています。

発電事業は、これまでの部分自由化の過程ですでに参入が自由化されていました。

全面自由化後はさらに参入が加速され、経済産業省への届け出のみで事業を行うことができます。

送配電事業者

送配電事業者は、従来の地域電力会社の送配電部門が発電部門から分離・独立し、新たに誕生する事業者区分です。

2020年を目安に事業の法的分離が行われますが、それまでの間は、地域電力会社の送配電部門がその役割を担います。

すでに東京電力では、2016年4月から、発電部門である「東京電力フュエル&パワー」、送配電部門の「東京電力パワーグリッド」、小売り部門の「東京電力エナジーパートナー」の3社に分離されています。

送配電事業者の主な役割は、送配電ネットワークの建設・保守のほか、電力の安定供給のための需給バランスの維持など、電力系統の運用です。

地域電力会社の一部門として事業が継続されるため、送配電事業者は引き続き経済産業省の許可制のもとに置かれます。

小売電気事業者

需要家と直接契約して電力を供給・販売するのをはじめ、電力の調達、料金プランの開発・提供、各種サービスの提供といった営業活動をしたり、電気料金の徴収を行ったりすることを主な役割としています。

2016年4月に実施された電力小売自由化に該当する箇所で、これまでの地域電力会社の小売り部門のほか、新電力会社として新規参入した企業などが、「小売電力事業者」となります。

全面自由化後は、経済産業省への登録が必要になっています。

電力自由化の仕組みと目的

電力自由化の仕組みと目的

電力市場は自由化によって、大きく変化することになりました。

では、なぜ電力自由化が行われることになったのでしょうか。

電力自由化の目的を仕組みと合わせてご紹介します。

電力市場の開放

日本の電力市場は、これまで地域電力会社10社の独占体制が長く続いていました。

そのため電力自由化によって新規事業者の参入機会を増やし、市場競争を促進するという目的がありました。

経済産業省によると、地域電力会社がこれまでに独占供給していた全国約7,800万の家庭と約700万の小規模事業者、合わせて約8,500万件が電力市場の新たな顧客となるため、新規参入企業にとっては大きなビジネスチャンスと期待されています。

電力料金の値下げ

以前の電力料金は、国の規制のもとに置かれ、経済産業省による査定・認可を経て料金が決められていましたが、電力自由化後は、小売電気事業者による自由な料金設定で競争が行われます。

実際に、2016年4月から電力以外の商品やサービスとセットにした割引料金、時間帯によってメリハリをつけた料金プラン、ポイント制を付加したプランなど、多彩な料金プランが登場しています。

新電力会社のプランの中には、従来の地域電力会社の料金に比べて割安となる料金設定も多くみられます。

特に一般家庭にとっては、ライフスタイルや家族の人数などに応じた料金プランを選択することで、電気料金を大幅に安くすることも可能です。

再生可能エネルギーの普及拡大

電力が自由に選択できることで注目されているのが、再生可能エネルギーです。

再エネ電力は、CO2の排出量が少ない電気であり、エコ志向の家庭だけでなく、環境への関心やサービス、環境関連の商品をPRしたい企業にとってもメリットになるため、消費電力を選ぶ際の選択肢の一つとなっています。

エネルギー資源に乏しい日本にとって、再生可能エネルギーは貴重な国産エネルギーであり、その利用拡大は政策課題でもあります。

また、CO2排出抑制の国際的な課題を解決する目的としても、再エネの普及拡大が求められています。

こんな選び方も!電力自由化でできること

電力自由化の大きな特徴は「電気を選べること」です。

従来の地域電力会社による供給ではなく、「より安い電気料金」「環境に優しい電気」など目的や興味に応じて選択できるようになり、これまでできなかった電気の選択が可能になりました。

環境問題に貢献

環境問題に貢献

環境への取り組みとして、CO2を排出しないクリーンな電気を購入したい人は、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの再エネ電力を選ぶことができます。

再エネ電力を選んで電力会社と契約する際には、その会社が販売する電力の電源比率をチェックすることが重要です。

再エネ電力100%の電気を販売できる会社は事実上ありません。

夜間や雨天時でも電気を安定的に供給するためには、再エネ電力と火力や水力などの電気をミックスして送電する必要があるからです。

現在は、固定価格買取制度によって電力会社が再エネ電力を買い取っているため、普段使っている電気にも一定の割合で再エネ電力が含まれているといえます。

そのため、電力会社が電気を販売する際に「当社の電気は再エネ電力です」と表示することは、再エネ電力の環境価値を二重取りしているとみなされるため禁止されています。

表示する場合は「FIT電気」という表現が認められており、電力会社の電源構成にも「FIT電気○○%」という表示がなされています。

電気でふるさと支援

地域おこしの一環として「ふるさと納税」が人気を集めていますが、電力でも地域貢献が可能ですどの地域の電力会社からでも自由に電気を買うことができるため、ふるさとの電力会社や地元の電力会社などを選んで契約することができます。

例えば、首都圏や関西圏で働いている会社員が、自分の故郷で東京や大阪にも電気を供給している電力会社を選ぶことも可能です。

また、最近では地域の電力会社で「地産地消」を目的とし、地域で発電した再エネ電力を地元の人たちに供給するという会社も増えています。

これからの電力小売自由化

電力が全面自由化になったことで、これからの生活はどのように変化するのでしょうか。

2020年、2030年に向けた目標への推進がすでに始まっています。

住宅の省エネ促進

照明や冷暖房、冷蔵庫など家電製品の省エネ機器の普及は、かなり進んできました。

これからは住宅の省エネ化とエネルギー利用の効率化が大きな課題です。

住宅自体の断熱化、日照や風通しの改善、自然エネルギーの活用などさまざまな省エネ対策があります。

エネルギー利用の効率化や最適利用によって、将来的にはエネルギーの自給自足が目標です。

そのためには太陽光発電や燃料電池などによる創エネ、電気自動車や蓄電池などの蓄エネ、それらをコントロールするHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の導入によって、一般家庭のエネルギー消費を最小限に抑えつつ、快適性を確保することが課題です。

すでにZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)に向けた取り組みも始まっています。

政府は、2020年までに標準的な新築住宅でZEHを目指すとともに、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現するという目標を掲げています。

地方の電力自由化促進

電力自由化による電力市場への新規参入は、首都圏や関西圏などで活発化しているものの、地方では遅れが目立ちます。

その背景の1つに、特に新電力会社による市場開拓が、人口集中地域を中心に行われている点が挙げられます。

今後は地方の活性化や地域おこしといった観点も踏まえつつ、地方での市場開拓が課題です。

送配電事業の自由化

2020年を目安に、送配電事業も法的な「発送電分離」が行われます。

送配電事業は、電力事業の要であり、国の規制によって託送料金や電力供給の円滑な運用をチェックする必要があります。

特に、送配電部門が管理する送配電ネットワークは、電力供給のインフラであり、電力事業に参入する企業すべてが自由かつ公平に利用できなければなりません。

発送電分離によって、より公平でオープンなネットワークの運用が求められます。

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新エネルギーのシステム構築が課題

新エネルギーのシステム構築が課題

電力自由化によって、電力市場は変革期を迎えました。

それに対応して、電力の供給システムも大きな変化を遂げるとみられます。

例えば、地域電力会社による大規模集中電源方式の役割が低下する一方、需要家や新電力会社による再生可能エネルギー・小型分散電源の役割が高まるでしょう。

今後は、再エネや小型分散電源をネットワーク化した、新しいエネルギーシステムの構築が課題となりそうです。

執筆者:ゆめソーラーマガジン編集部

ゆめソーラーマガジンは、福岡・佐賀・熊本・鹿児島の太陽光発電・蓄電池専門店「ゆめソーラー」が運営するオウンドメディアです。太陽光発電・蓄電池に関するノウハウを中心に、再生可能エネルギーや環境に関するお役立ち情報を発信しています。|SNSで情報発信中!▶公式Instagram

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